「この子には勝てない」というほど絵が上手かった友人の話 2025/10/09 つれづれ edit ※明るい話です!私が美術予備校で油画を専攻していた高校時代、1人際立って上手い同級生がいました。夏休みに課題でクロッキー帳を1冊埋めなければならない時、私は何を描けばいいのか分かっておらず、最終日に徹夜で描いたのですが、休み明けに見せてもらったその友人のクロッキー帳は丁寧に人物、静物、鉛筆、着彩と種類があって、夏休み中ずっと絵と向き合ってきたんだなと感心しました。予備校は学校終わりに通っていたので、始まるまでに夕飯を食べるのが日常だったのですが、その子はいつもキャンバスに絵を描いていました。「お腹空かないの?」と聞くと、「空腹の方が集中できるから」と笑っていました。真似できないと思った。現役生のうちは様々な分野を体験します。彫刻科に混じって塑像をしたり、みんなで水族館や動物園や博物館や美術館や有名な建物に出かけたり…(ン?これは浪人中だっけ?)その中でアニメーション実習というのがありました。パラパラ漫画みたいに絵を描いて、前後の人と繋げてアニメを作ろう、というものです。映像系の体験でした。わたしはもともとイラストばかり描いていたので上手かったようで、パンフレットか何かに載った気がします。その時にその友人が私のところに来て、「上手い」と褒めてくれて、もうめちゃくちゃ嬉しくて…「やったー!!」と小躍りしながら帰りました。受験直前、高校も授業がなくなり予備校漬けになる冬期講習中、私はその子の隣の席に配置されました。美術予備校というのは入学した初日から何のオリエンテーションもなく、「行ったら描く」だけです(少なくとも私のところは)それを講師が巡回して、ふっと隣にしゃがんでアドバイスしたり質問します。先生がその子にアドバイスしているのを聞いていると、「隣の〇〇(私の名前)の絵とかさ…そういうところを取り入れてみなよ」というようなことを言っていました。私もその子に何か影響を与えている…?と信じられない気持ちと、今も覚えているほど気分が高揚して、嬉しさでカチコチになりながら描き続けました。美術予備校には講評という地獄の時間があり、全員の絵を並べて1人ずつ晒され感想をもらいます。現役生の時なんてただもがいてただけで大した絵を描いておらず、毎度「ふ〜終わった終わった」という感じだったのですが、帰り際、薄暗くなった室内でその子が講師と2人、その日のデッサンを前に話し合ってる姿を見ました。「このままいけばほぼ間違いなく合格すると思うから、〜…」と話している先生は真剣で、絵を見つめながら聞いているその子の斜めの頬のなだらかな感じとかも何となく神々しくて、不可侵領域がそこにありました。結果、その子は針の穴のような狭き門に現役で合格していき、私は大抵の人と同じように浪人生になりましたが…よく「自分より上手い人・成功している人に嫉妬する」といった話がありますが、私はその子に対してはほとんど嫉妬はありませんでした。むしろ、その子が美大に受かってしまってから、張り合いがなくなってしまいました。同じ分野に天才がいるのは恵まれたことだった。特に親しいわけではなかったけども、心の中では良きライバルとして意識していたし、とてもリスペクトしていました。その子と話した数少ない会話が、何年も経った今になって繰り返し思い出されていて……その子のインスタで「今はどんな絵を描いてるんだろう」と見に行っていた時期があったけど、ここ数年は見ていないです。余計な気持ちが混じると思うので。私は今は漫画を描いています。内容はちょっとアレですが、だからといって純粋なものが描けないわけじゃない。「このジャンルだから妥協しなきゃいけない」ってないと思うし、むしろどんなものでも泣くほど面白くしてやるぞ!と自分を爆発させるつもりでいます。なんだか心から欲しかったものを諦めてからの方が、心から欲しかったものについて理解が深まった気がするなあ。私はその子のことを友人だと思っています。思うくらいなら良いよね。懐古でした😄
「この子には勝てない」というほど絵が上手かった友人の話
私が美術予備校で油画を専攻していた高校時代、1人際立って上手い同級生がいました。
夏休みに課題でクロッキー帳を1冊埋めなければならない時、私は何を描けばいいのか分かっておらず、最終日に徹夜で描いたのですが、休み明けに見せてもらったその友人のクロッキー帳は丁寧に人物、静物、鉛筆、着彩と種類があって、夏休み中ずっと絵と向き合ってきたんだなと感心しました。
予備校は学校終わりに通っていたので、始まるまでに夕飯を食べるのが日常だったのですが、その子はいつもキャンバスに絵を描いていました。
「お腹空かないの?」と聞くと、「空腹の方が集中できるから」と笑っていました。
真似できないと思った。
現役生のうちは様々な分野を体験します。
彫刻科に混じって塑像をしたり、みんなで水族館や動物園や博物館や美術館や有名な建物に出かけたり…(ン?これは浪人中だっけ?)
その中でアニメーション実習というのがありました。
パラパラ漫画みたいに絵を描いて、前後の人と繋げてアニメを作ろう、というものです。映像系の体験でした。
わたしはもともとイラストばかり描いていたので上手かったようで、パンフレットか何かに載った気がします。
その時にその友人が私のところに来て、「上手い」と褒めてくれて、もうめちゃくちゃ嬉しくて…「やったー!!」と小躍りしながら帰りました。
受験直前、高校も授業がなくなり予備校漬けになる冬期講習中、私はその子の隣の席に配置されました。
美術予備校というのは入学した初日から何のオリエンテーションもなく、「行ったら描く」だけです(少なくとも私のところは)それを講師が巡回して、ふっと隣にしゃがんでアドバイスしたり質問します。
先生がその子にアドバイスしているのを聞いていると、「隣の〇〇(私の名前)の絵とかさ…そういうところを取り入れてみなよ」というようなことを言っていました。
私もその子に何か影響を与えている…?と信じられない気持ちと、今も覚えているほど気分が高揚して、嬉しさでカチコチになりながら描き続けました。
美術予備校には講評という地獄の時間があり、全員の絵を並べて1人ずつ
晒され感想をもらいます。現役生の時なんてただもがいてただけで大した絵を描いておらず、毎度「ふ〜終わった終わった」という感じだったのですが、帰り際、薄暗くなった室内でその子が講師と2人、その日のデッサンを前に話し合ってる姿を見ました。
「このままいけばほぼ間違いなく合格すると思うから、〜…」と話している先生は真剣で、絵を見つめながら聞いているその子の斜めの頬のなだらかな感じとかも何となく神々しくて、不可侵領域がそこにありました。
結果、その子は針の穴のような狭き門に現役で合格していき、私は大抵の人と同じように浪人生になりましたが…
よく「自分より上手い人・成功している人に嫉妬する」といった話がありますが、私はその子に対してはほとんど嫉妬はありませんでした。むしろ、その子が美大に受かってしまってから、張り合いがなくなってしまいました。
同じ分野に天才がいるのは恵まれたことだった。
特に親しいわけではなかったけども、心の中では良きライバルとして意識していたし、とてもリスペクトしていました。
その子と話した数少ない会話が、何年も経った今になって繰り返し思い出されていて……
その子のインスタで「今はどんな絵を描いてるんだろう」と見に行っていた時期があったけど、ここ数年は見ていないです。余計な気持ちが混じると思うので。
私は今は漫画を描いています。
内容はちょっとアレですが、だからといって純粋なものが描けないわけじゃない。「このジャンルだから妥協しなきゃいけない」ってないと思うし、むしろどんなものでも泣くほど面白くしてやるぞ!と自分を爆発させるつもりでいます。
なんだか心から欲しかったものを諦めてからの方が、心から欲しかったものについて理解が深まった気がするなあ。
私はその子のことを友人だと思っています。
思うくらいなら良いよね。
懐古でした😄